カラーリングしたライティングのまとめ

写真に色を付けようとする場合、幾つかの手段があります。

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1.単純に衣装や小物やヘアメイク等のスタイリングで色をつける方法
2.色付きのバックドロップ(背景紙や布)を使用する方法
3.カラーフィルターやカラージェルをレンズ前にかざして撮影する方法
4.撮影後に色温度を変えたり、色調整をしたりソフト上で色をつける方法
5.環境光である定常光とストロボ光をミックスする方法
6.カラージェルをストロボに付けて、ストロボを使用する方法
7.上記の幾つかを複合的にする方法

等があります。上の黄色い写真は上記6で黄色のカラージェルをがっつりと背景に付けての撮影です。

今回は、最近撮影した写真でカラージェルをストロボに付けて撮影したものをまとめてみました。

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上の写真も、同様で、白ホリゾント(白壁)に赤フィルターでがっつりと色を付けました。

次は微妙に淡く色を付けてみました。
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そして、淡くグラデーションを付けてカラーリングしてみました。
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更に、淡く、且つ環境光のタングステンと部分的にミックスさせてみました。とても微妙な色合いです。
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次はがっつりと背景に色を付けて、グラデーションをつけて中央を明るくしてみました。
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次は背景の白壁をダークに落とし、且つ淡い色をミックスして微妙な色調を表現してみました。
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更にダークなグレーに落として、且つ、部分的(左端)に色付けして深い雰囲気を表現しました。
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またまた、更に、タングステンとストロボのミックス光が感じる露出設定をしてダークブラウンにして秋色を表現し、部分的(左端)にグラデーションを付けて紅葉色を演出してみました。
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これらの写真は背景の色を微妙に光をコントロールしながら変色させて演出した事例です。最初のカラーリング分類の2では簡単にスキル不要で背景のカラーリングが出来ますが、それは背景紙や布の色や柄に依存されてしまい、微妙な風合いやグラデーション等は付けられません。または、依頼者のオーダー毎の紙や布を所持している事は現実的ではなく、毎回、ロールを貼り直すのは撮影の機動力が著しく低下してしまいます。クライアントではなく、撮影者の事情(所持している紙や布の範囲内)や論理にクライアントや被写体の方が合わさなければならないという残念なフォトセッションになってしまいます。よって、撮影者はカラーリングをコントロールするスキルと環境があると、イメージや形容詞をカタチにしていける範囲とキャパシティーやフレームが拡充されます。私ももっと上手くなりたいものです。

続いて、
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この写真ですが、今まで紹介した写真と異なると思いませんか??

この写真はピンクの色調にしたものですが、夢の中をイメージしたので、背景だけではなく、人物も含めて全体的に色合いを付けました。顔の色も肌色では無く、ピンクにしています。そこが前半の写真達との違いです。

写真に色を付ける部分については大きく3つに分類されます。写真はA.レンズ前〜被写体 B.被写体 c.被写体〜背景 の3層レイヤーで成立しています。
よって、
1.被写体に色が付いているのか
2.背景に色を付けるのか
3.写真全体に色を付けるのか
そして、その複合で被写体と背景の部分的に色を付けるか等に分類されます。

これを間違うと、撮影後に依頼者の頭にあるイメージと違ってくる事になります。例えば依頼者が(背景のみを赤くしたくて)「赤くしてほしい」とオーダーを出した場合に、撮影者は被写体も背景も全体の風合いを赤くしてしまうと全く違った写真になってしまいます。

更に複雑ですが、タングステンの環境光をミックスさせるレンズと露出設定で、且つ、複数の色で背景と被写体全体の色で風合いを作ってみました。
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次はシャドー(人物の後ろの壁にあたる影)の色をコントロールしてみました。(注:参考までに人物の顔の影はシェードと表現する方がニュアンスが近いです。)

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向かって右のシャドーは黄色、左のシャドーはグレーにして、衣装の色に合わせてデザインしてみました。

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背景を衣装の色に合わせて、向かって左のシャドーは同系色のピンクパープルに、右はスカートと同系色のモノクロ系のグレーにしてデザインしてみました。

最後は演出系の作品事例をご紹介してみます。

背景にダークな赤を入れて、且つ、ベッドの模様をつけてみました。
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スポットライトに特注の水玉柄のGOBO(GO Behind Optics)を付け、そのライトシェーピングツール手前のストロボ自体にオレンジ色のジェルをつけて、オレンジ色の水玉の光を演出してみました。
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とりは、海の中に沈んでいる様子を白ホリのスタジオ内でライティングにて表現してみました。
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単調な色にならない様に2色の青色を混ぜてグラデーションをつけて微妙に多色にして、口元に空気を表現するための水玉の光を演出してみました。水の中に沈んでいる様に少しは見えるでしょうか?

言うまでも無い事ですが、カラーリング演出をする際には、ただ、画的にカッコイイとかですべきではありません。あくまでも依頼者(又は自分の作品の場合は自分)の「想い」「イメージ」「伝えたい事」を具現化する手段でしか無く、結果として色が付いている訳です。

技術的には、前述の如く、カラーペーパーや布に比べて格段に難しいです。最初、間違いがちなのは、色を付けようとすると該当のストロボの出力を強くしてしまう事です。強くなると光なので、明るく白くなってしまいます。また、白い箇所に光で色を足そうとしても光では色が付きません。それを理解するにはヒストグラムを読む事が必要です。白い壁を白く表現するとヒストグラムでは山が右端に行き、それ以上の出力では白飛びするだけです。そこには何らの色は乗っかりません。その為には、カラージェルの付いたストロボを打つ前に、載せたい色の濃度を考えたヒストグラムを作っておく事が必要です。するとカラージェルの付いたストロボを打つと、色が付いていきます。但し、光量はヒストグラム上、富士山の様な形で登って降りていくので、好きな濃度が調整できる仕組みです。つまり、出力が弱すぎても強すぎても色がつかず、ヒストグラムを上って降りていく感覚です。

たまたま、まぐれで面白い演出ができるかもしれませんが、思い通りにコントロールできるのとは意味合いが異なります。単純にライティングは物理の世界なので、原理原則を理解できると、応用が効きます。

最初に全体的なデザインを検討し、ターゲットイメージを頭に作ります。次にレンズ選び、メインライト選び、サブライト選び(カラージェルを含めて)をして全体のバランスとスタジオ無いでのカメラ位置、ストロボ位置、モデル位置等のポジショニングデザインを行います。後は光のバランス設定を行っていくというワークフローになります。

正直、難しいので、私も依頼者の強い意志を感じなければ、画づくりをしようというアドレナリンが湧いてきません。カラーリングをしなくて済むならそれに越した事は無いくらい、厄介です。技術的な問題だけではなく、ストロボの数やストロボアクセサリー(Light Shaping Tool) がたくさん必要になり、効率性が急に落ちます。しかし、たまに挑戦したくなってきます。

この内容とは直接に関係ありませんが、2017年1月28日(土)15-17:30に「ポートレート作品撮りワークショップ」を行います。ゼミ形式なので、考えながら試してライティングを中心にした画づくりを追求していける内容です。詳細及び問合せ/申込みは http://www.portrait-school.com/workshop.html#portrait-ws  にて。少人数制(8名まで)ですので、申込みはお早目に。

追記(2017年5月14日)
上記の「ポートレート作品撮りワークショップ」(2017年1月28日実施)は終了しました。
同ワークショップで、カラーリングをテーマとした内容(「カラーリングポートレート〜作品テーマに合った色を添える〜」)で2017年7月22日(土)15時〜17時半に開催いたします。感性と論理と技術が複合となった内容となりますので、面白い発見がある事でしょう。詳細及び問合せ/申込みは http://www.portrait-school.com/workshop.html#portrait-ws  にて。少人数制(8名まで)ですので、申込みはお早目に。

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