“Nichiren” 作品撮りレポート

日蓮宗 本円寺でロケ撮影を行った タイトル “Nichiren” の作品撮りのレポートを行います。

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この作品が Art & Entertainment, SOLIS MAGAZINE (New York,NY.USA) に掲載されました。
該当ページ:http://solismagazine.com/Portfolioshowcase/alto-tanaka-showcase/
文章の内容は日蓮宗の歴史や背景を中心に記載されています。

私は「お寺で作品撮りをしよう」とヘアメイクスタッフの方からお声掛けして頂きました。そしてキャストの方がロケーションの段取りをして頂き、作品撮りチームが出来上がりました。

毎度の事ながら作品撮りをする場合、コンセプトワークがキーになり、まず、キャスト、スタッフのイメージを統一していく事から始まり、そこが「生みの苦しみ」の段階です。作品を通して「伝えたい事」、「表現したい事」を設定し、そこからブレイクダウンしてロケーション(背景、小物)、スタイリング(衣装、ヘアメイク、アクセサリー)、写真演出(レンズ、ライティング)と細部に各々の担当を中心に有機的に作業を進めていきます。最初のコンセプトが決まらない事には皆バラバラで作業は前に進みません。そこで、まず、「お寺で撮影する事」の意味や意義付けを自分なりに考えました。そして、その中でも「日蓮宗って何だろう」と私自身が無知である事に気付き、作品撮りチーム全員で日蓮宗の特徴を調べるところからスタートしました。SNSを活用して、クローズな打ち合わせを随時行い、意見交換し、そこから方向付けを行っていき、ヘアメイクや衣装のアイデアも事前に画像で確認する事ができました。フォトグラファーである自分としては、コンセプトとスタイリングからターゲットイメージを設定していかなければなりません。(=頭の中に最終形の画を描かなければなりません)。

そして、事前に意見調整をして作品撮りチームが現場に集合しました。頭の中にはキャストもスタッフも「鎌倉時代の日蓮の修行僧の苦悩や厳しさを現代のフレーバーを加味して描こう」というイメージを持っていました。私は場所は事前にwebの写真で確認しましたが、実際に見て空気を感じなければイメージが沸きません。

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まず、住職にご挨拶をして、館内をロケハンさせて頂きました。私はイメージの為にあれこれと考えたり悩む時間、会場設定、機材選び、設営等の具体的作業時間が必要なので、ヘアメイクを急がずに時間をかけて納得いくように仕上げてくださいとお願いしました。

少し、フォトグラファーの観点からの文章になります。
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最初は立派なお寺の装飾物を全体かつ歪みなく写してみたかったので広角のシフトレンズ(TS-E17mm)を使用して開放にて撮影してみました。修行僧をロケーションに違和感なく、溶け込ませてみました。

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そして今度はクローズアップし、仏具/装飾物の中に囲まれた不思議な雰囲気を表現しました。これもシフトレンズ(TS-E90mm)を開放で撮影。柔らかいボケ味を出したいのですが、単なるf値の明るいレンズで撮影すると後ろボケになってしまいます。すると背景にある日蓮上人の顔は当然ボケてしまいます。シフトレンズを使用する事により、メイン被写体のモデルと背景と両方にピントを残し、途中の箇所をボカすという不思議な雰囲気に仕上がります。そして、モデルの髪のエッジを表現しようとライトを後ろからも仕掛けてみました。

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お寺の天井は美しく、ロケハンした時にも気になっていました。これを写さない手は無いと思い、14mmの広角レンズで撮影してみました。

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動きのある画を撮影してみました。しかし、人の視線に近く表現したく、ボケ味のいい50mm F1.2のレンズで開放で撮影しました。この場合、日中で明るく、且つF1.2で撮影するには、HSS(ハイスピードシンクロ)に対応する大光量のストロボで撮影するしかありません。そこで Profoto B1 に背景へのライトによる風合いも考慮し、ビューティーデッシュを取り付け、1/3200秒で撮影してみました。背景が暗くならない様に ISOは 640 にしました。F1.2で予測しづらいジャンプの瞬間の撮影なので、全身全霊でピントとタイミングを合わせたのを覚えています。

その時のBTS写真です。(撮影:吉川るな)
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標準ズームレンズでストロボシンクロさせながら、シャッタスピード1/20秒のスローシャッターで三脚を使用して、ズーミングによって、ぶらしてみました。

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屋外で撮影しました。撮影時は昼だったのですが、全体の作品のトーンの統一と渋み、深みを表現したかったので、1/8000秒でストロボシンクロ(HSS)させました。メインライトはハリウッド映画でも使用する味のあるフレネルスポットにバーンドアを付けて絞って使用しました。背後も暗すぎず光を起こす為にビューティーデッシュをつけて多少、光を柔らかくしてみました。レンズは85mm f1.2で、欄干の間から撮影しました。

今回の写真撮影のツールとして活躍してくれたのが、バッテリー駆動でコードレスを実現させたストロボである Profoto B1 です。モデルの黒髪部分の立体感を演出する為にはライティングが必要です。仏壇や装飾物の狭いスペースの中でもコードレス環境なので微妙にストレス無くストロボ位置をアジャストさせたり、全身撮影の際でもコードが写り込んだりしません。モデルの真後ろから近距離で撮影する場合でも、LEDライトなので熱を持たず、髪や衣装が焦げる心配もありません。また、外光のある日中でもHSS機能を使用して渋みがあり、且つ被写界深度の浅いボケ味のいい写真が撮影できます。今回の様なアウェイのロケ撮の際でも電源コンセントの場所を気にせずに、効率良く機動力のある撮影ができました。

最後はお疲れ様写真です。
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下記はクレジットです。

Model : Alto Tanaka
Make up : 幅 勇樹 (Yuki Haba)
Hair styling : 吉川 るな (Luna Yoshikawa)
Costume design : 豊田 浩史 (Koji Toyoda)
Location : 日蓮宗 本円寺 Nichiren Shu honenji
Photography : 曽田 啓之 (Hiroyuki Soda) 

追伸:草切住職、素敵なロケーションで撮影させて頂き、ありがとうございました。

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