格闘家 朝倉海を撮る

1年以上ぶりのブログです。私のブログは実際に撮影したポートレート写真の紹介が中心であり、クライアントや被写体の方に納品してからや、広告だと発表されてからのタイミングになり、撮影日程よりかなり遅い場合が通常です。ただ、今回はそれ以上に遅くなってしまいました。本日、紹介するのは格闘家の朝倉海氏をジムで撮影したもので、2023年10月中旬に撮影したものです。

 

ちょうど、ジムのネーミングが “トライフォース赤坂” から “Japan Top Team ” に変わった頃に撮影しました。実は私はこのジムに2022年から通っており、キックボクシング、MMA、ブラジリアン柔術、グラップリング、レスリング等のクラスに参加しています。朝倉海氏はこのジム所属であり、一般クラスにも参加される事があり、MMAのクラスでスパーリングをしてもらったり、ジムの親睦会やロッカールームで話す機会があり、今回、撮影をする運びとなりました。というのも、朝倉海氏のYouTubeサブチャンネルの “ほのぼのかいちゃんねる” にてスパーリングを行い、それに加えてジム内で写真撮影するという企画でした。

 

ここからは撮影時を思い出しながら書いてみます。最初にボクシングのスパーリングをして、その後、息もハアハアとしている中での機材セッティング。自分のスタジオではなくアウェーの撮影なので、機材はスタンドから組み立て。フォトグラファーが一番最初にやる事は頭の中に出来上がり写真の大体のイメージを作る事です。今回は、格闘家らしく陰影を入れて強さを表現する事、そして新しいネーミングのジムでやっていく決意が感じられる絵作りにしようという方向性を自分の中で決めました。そして、具体的には、どこの位置に被写体に立ってもらい、どこを背景とするのかの位置関係を決め、どこをストロボで照らすのかを決定。

 

ジムは一般会員の練習時間なので、明るい状態のままであり、環境光自体は変えれないので、ストロボを使用して明暗、濃淡を頭の中でイメージしてみました。

 

写真として成立させる為、私は写真の中に情報を入れ込みます。例えば、イベント撮影だと何のイベントか分かる様に看板やテキスト情報や象徴的な物や人を写真の中に入れたりと。ポートレート、プロフィールや宣材等の人物撮影ならその人の職業や専門が分かる情報を。今回は被写体がMMA格闘家なので、ケージを入れながら、背景にジムのロゴが入る様にしました。そのケージとロゴの両方の情報が入る位置関係を探して撮影しました。

 

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そして、筋肉のデフィニションがより引き立つ様に陰影を付けるためにスポットライトをメインライトにしました。被写体のみにスポットライトを当てるだけでは、背景が落ちてしまうので、背後のロゴに向けてもう1燈のスポットライトを打ち、ロゴも明るくなる様にしました。全体の雰囲気はダークに落としました。

 

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腹筋の割れ、背中や肩の筋肉がカッコよく表現できました。

 

次にケージ(リング)に入って撮影しました。そして、Japan Top Team(ジムの名前)のロゴが背景にケージ越しに見える位置関係を作りました。もし、被写体が立つとロゴが足元にくるし、かと言って位置合わせの為に、上から撮ると短足、頭でっかちになってしまうので、座ってもらいました。ロゴと被らない絶妙の画角を探して撮影する事ができました。

 

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次に背景のロゴへのストロボ照射範囲を広くして、全体的に明るくしました。ただし、その場合も被写体全体に広がるライトにせずに、ホリを深く表現する為にスポットライトでコントラストの確保をしました。

 

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ケージ内で天井に吊り下げられたロゴを背景に入れて撮影する事にしました。ここの位置関係も微妙で、ケージに近づき過ぎるとロゴに比べて人物が小さくなるし、頭とロゴの間が空き過ぎるので、しっくりとしない絵作りになってしまいます。よって、ケージから少し前に立っていただきました。カメラは手持撮影でしたが、このシーンで心掛けたことはロゴが横に広がっている為、水平垂直をきちんとレンズ歪みがない写真にしました。

 

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最後はリング床を含めて3つのロゴが入る様に撮影する為のポジショニングにて撮影しました。ジムのCIカラーである赤×黒のイメージが表現できました。

 

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今回の撮影で技術的にも難しかった事、苦労した事、気を配った事を記載します。
1)被写体が著名人であり、拘束時間が限られており、アイデアを直ぐに決めて、ストロボやパソコンの設営は走って行いました。

 

2)ストロボによって陰影を付ける事を狙ったのですが、ジム全体がとても明るい環境であり、どこにライトが当たっているのかは勘でした。通常、スタジオ撮影の場合は、環境光を消してストロボのモデリングランプのみを付けて照射位置や範囲を事前に確認できるのですが、今回はシャッターを押して撮影してモニターで写真を確認しなければ、光がどの様に照らしているのか分かりませんでした。

 

3)ロゴはビニール素材のシートなので、スポットライト光が当たるとテカリが出るので、照射角度と光量調整が難しかったです。

 

但し、撮影しやすかった点もあります。それは全くのアウェーの場合は事前にロケハンしなければ持参機材も分からないし、環境光も分からないけれど、私にとってはいつも通っているジムなので、雰囲気に呑まれる事もなく、ある程度のイメージは事前に分かっていたので、ファインダーを覗いての細かな位置調整のみで済みました。

 

また、細かな事ですが、リングの高さや太い柱があるので、使用ストロボが写真に写り込まない様に隠せるスペースがあったので、近距離からの使用が通常であるスポット撮影系でもストロボを上手く隠して写真に写り込まない様にできました。通常だと、被写体の背中の後ろにストロボを置いたりして、被写体が少しでも動くとストロボが見えてしまったりするので、ポージングに制限が出てしまいます。

 

ジム内での撮影の場合、環境光が明るいので、ストロボを使用しなかったり、スマホで撮影する事もできるのですが、その場合、目で見たままにアウトプットされるので、フラットな写真になりがちです。同様に、一番一般的なアンブレラの様に全方位的に柔らかく光を回すストロボを使用すると、光の照射範囲が広いので、万人受けする綺麗な写真は撮れるのですが、今回は格闘家という事もあり、体の凹凸を表現したかったので、陰影や明暗を出す為にスポットライト撮影で攻めてみました。

 

また、朝倉海氏は色んな格闘技雑誌やマスコミ取材対応、そして自分のアパレルブランド等のモデル撮影も経験されており、撮影慣れされているので、ポーズを詳細に指示する以前に自分から提案やアイデアを出して頂いたり、ポーズや表情をコントロールされていたので、随分、助かりました。私はライティングをして、基本的なポジショニング(被写体と撮影者の立ち位置の関係)のみで、後は朝倉海氏にリーダシップを取ってもらったので、構図、シャッタータイミングのみに集中できました。被写体の主体性に助けられた事がスムーズに撮影が進んだ一番の理由です。

 

上記の様子が分かるメイキング的なYouTube動画がありますので、添付しておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=T0LGmDcNDaE&t=5s

 

 

上記の動画は朝倉海氏に便乗して撮影させて頂いたのでのですが、そのオリジナル企画の朝倉海氏のYoutubeチャンネルでの動画を添付させて頂きます。この撮影が行われるまでのボクシングスパーリングの様子もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=6uvpaKY6J3g&t=318s

 

という事で撮影の前に汗をかきました。

 

因みに皆様ご存知の様に、この撮影の2ヶ月後の大晦日のRIZINの試合で朝倉海選手はバンタム級のチャンピオンになられました。

 

追伸:朝倉海さんへ。ブログで写真紹介するのが随分とタイミングがずれてしまいました。その間、ジムの名前が変わったり、体制が変わったり、年末の試合であったりと、デリケートな時期が続いたので、ブログアップのタイミングをズルズルと逃してしまいましいた。また、機会がありましたら、フォトセッションしましょう。ジムでもスパーリング、そしてご指導、よろしくお願いします。

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