ポートレート作品撮りレポート ” BOTANICA “

11月、12月とスタジオは年間でも撮影ピークの時期。そんな時期にこそ作品撮りをしなければ、クリエイティビティが枯渇してしまいます。

作品撮りって、いつかやってみよう、やってみたいと思う人にはいつかのタイミングで必ず実現する様な気がしています。

今回のモデルは YUMIさん。事前に感性合わせの為に会いました。雑談をして、ほんの5分程度ですがスタジオで撮影もしました。

その時の写真です。

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飾り気が無くて、ポーズや表情を誇張せずに自然体な雰囲気な方でした。

自分の表現する世界観、モチーフとモデルの特性とのマッチング作業が始まります。アイデアはそのうちふとした時に降りてくるだろうと思い、放ったらかしにしていました。撮影日も近くなって来たある日、フレンチシャビーな風合いの植物をモチーフとした作品を撮ろうとアイデアが浮かびました。絵画っぽく、刺激の無い優しい風合いにしていこうと、ターゲットとなるイメージが頭の中に作られました。この時点でレンズ、メインライトは頭の中で決まっています。

そして、具体的にスタイリングのイメージを作って行きました。衣装はオリジナルで作りたいという思いから購入という選択肢はありませんでした。百花繚乱に咲き乱れる花では無く、シャビーながら力強く生きる植物の世界観を表現しいという思いから、ドレスの模様ではなく、本当の植物を使用したドレスを作る事を目標にしました。ただ、植物の調達、工法、デザインのアイデアは本番前日までかかりました。必要な植物の量も明確に計算した訳でもありません。物理的にかかる力や重さの予測とそれに対する材料や工法は当日の現場でもアジャストしていきました。

当日、モデルの YUMI さんとギャラリーで打合せをしました。

 

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コンセプトや世界観、テーマやタイトル(”BOTANICA”)を伝え、イメージを共有してきました。

そして、スタイリング(ヘアメイク、衣装制作)を行いました。通常の衣装なら事前に制作しておくものですが、植物の衣装は事前に制作する事はできません。時間が読めずに2時間かかりました。材料は緻密に計算したぐらいピタリと適量を準備していました。工法は試行錯誤しながら進めて行きました。この衣装制作に時間とエネルギーがかかり、スタジオ設営準備が大幅に遅れました。

メインライトは 1’× 6′(30cm×180cm)のソフトボックスにグリッドを付け、さらに細く、柔らかい光を作る為のストリップマスクを取り付けました。サブライトは背景をグリーンに染める為に左右から緑のカラージェルを付けたストロボを打ちました。木漏れ日感の演出としてムラを付ける為、GOBOを付けたスポットライトを被写体と背景に打ちました。新し試みとしてGOBO自体にも緑のカラージェルを付けました。レンズは85mm f1.2を使用しf1.4で撮影する事にしました。あとは被写体のスタジオ内でのポジショニング、レンズのF値に合わせ、これらのストロボのバランスを取る事です。

課題はいくつかありました。しっくりとイメージ通りの色合いを出すことに苦戦しました。最初は青緑っぽくなり、何度も頭の中にあるターゲットとなるフレンチシャビーの色合いに近づける様にテスト撮りと確認、フィードバックを繰り返しました。

 

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2つ目の課題は演出に使用した前ボケの植物です。写真に植物のテクスチャーを付ける事を狙ったものです。植物の間をすり抜けて被写体の近い方の眼にピントを合わすことに苦戦し、ピントが合わず、撮影のシャッタータイミングが遅く、スピードがでませんでした。歩留まりを減らす為にf1.4を選びました。構図やモデルの姿勢や向きが変わる度に前ボケの植物の高さ、向きを変えたり、撮る位置や高さを変えるのにも苦労しました。

 

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そして撮影した写真です。まずはバストアップから。

 

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続いてスリークオーター。

 

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そして、全身。

 

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座りポーズの時には演出の為、フィンランド苔を床に配置させて、植物のテクスチャーを付けてみました。

 

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また、モデルの座る角度、撮影者の撮る高さを変えてより、立体感、奥行き感を表現しました。

 

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最後は寝てのアップ。

 

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撮影終了し、モデルと一緒に撮影内容を確認しました。

 

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最後は恒例の「お疲れ様写真」。

 

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おまけですが、モデルがドレスを脱いだ後、記録の為に使用した植物の一部を押さえておきました。

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上記内容はより臨場感のある youtube にてレポートしています。内容は、打ち合わせシーン、ドレス制作、メイク、ライティング設営、撮影、感想インタビュー等です。ポートレート作品撮りのワークフローがダイジェストで描かれています。ヒントやエッセンスが色々と散りばめられています。フォトグラファーあるあるも。撮影当日の現場ワークのみですが。アイデアが降りてくるまでの苦悩は私の脳の中にしかなく、見る事はできませんが。

 

model : YUMI ANDO
photographer : HIROYUKI SODA

 

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Portrait School のポートレート撮影ワークショップ :
http://www.portrait-school.com/workshop.html#workshop-1

(次回の撮影ワークショップは2019年1月26日(土)15:00-17:30 テーマ:「ポートレートを演出する背景とテクスチャーの研究」)

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