ポートレート撮影ワークショップ 実施レポート(2019. 4. 20)

先日の4月20日(土)に実施しましたポートレート撮影ワークショップのレポートをします。

「ポートレート撮影ワークショップ」は3ヶ月に1回の20日前後の土曜日に開催しています。毎回、設定テーマに沿って、モデル撮影の実践を通して行われます。作風の幅を広げていく事が狙いです。フォトグラファーとして依頼者からの様々なリクエストに応える必要性、そして自分が作品撮りをする際の表現力の豊かさについてバリューを感じる方が対象です。

 

このワークショップは毎回、累積的に撮影技術の積み上げがある内容であり、且つ、それらの基本の軸をブラさずに、毎回反復していけるカリキュラムにしています。今回のワークショップでは新たに参加された方、2回目だった方のみの少数であった為、スタジオでの実習の場でもポートレート撮影のファンダメンタル(軸)について説明する事ができました。

 

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従来、このブログでのワークショップ実施レポートは、詳細にライティング等の技術面について記載していました。しかし、あまり読まれている実感も無いので、今回からサラッと書くことにします。写真等を流して見て頂いて雰囲気がわかる程度にしておきます。今回は写真を中心に自分の思う事、感じる事をエッセイ的に記載していく事にします。

 

今回のテーマである「ブレ感」。私も美容師やヘアメイクの方が作品主である作品撮りの依頼を受ける際に、「ブレた写真を撮って下さい」というオーダはたまに受けます。また、自分の感情を表現したい場合に、ストロボで止まった写真では、どこそこ違和感を感じる事があります。

 

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また、ブレた写真って、一般的には失敗写真の部類に入ります。特にイベントスナップの様にしっかりと記録する場合、証明写真の様に法的要素のある写真ではブレるとクレームを受けるでしょう。しかし、感情を表現したい場合、写真をビジュアルコミュニケーションと捉える場合、狙いとして、演出として、写真表現としては「ブレ感」は表現方法の一つでしょう。そう考えると、スナップ写真であってもあえてブラしたり、ポートレート撮影であってもブレ感で幻想的な世界観を表現する事はアリだと思います。

 

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ワークショップ参加者の方に毎回、最初に参加理由を伺います。特に今回は「ブレ感、幻想的」というマイナーな設定テーマであった事、そして事前にアウトプットが掴みにくいので、参加者は受講生はいないだろうとも思っていました。集まった方々に、テーマに興味があったのかを伺ったところ、「まさにブレ感のある写真を撮ってみたかった、学んでみたかった」「ブレ感のある表現に好奇心があった」等のコメントを頂きました。このワークショップに北海道から1泊予定で参加して下さった方もいらっしゃり、感動しました。参加者の皆様、ありがとうございました。

 

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割り込みですが、今回のコーデを説明します。

 

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1着目は柔らかい素材と色合い。シューズはシンプル&フラットな布製のもの。タングステンでの環境光とストロボ光ミックスでの撮影に似合う色合いを選択。モデルのヘアカラーに似合う色合い。また、風になびく素材。

 

スタイリングとして次はヘアメイク。髪の毛も素材同様に風になびくダウンヘア、そして、ナチュラルメイク。アイシャドーは衣装に合わせ、薄めのグリーン、リップは薄めにオレンジ系ピンクと全体的に淡い世界観。

 

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最初にカメラ側の設定。絞りとシャッタースピードを決めました。次にメインストロボの形状。アクセサリーを決定する際のポイントについて説明しているところ。メインライトの光量、モデルとのポジショニングを決め頭にあるターゲットイメージに近づける為に環境光のコントロール。最後に参加者のレンズの違いによってISOを決定。

 

今回は私はかなり地味な服を着ています。自分がブレても絵になりやすい柄です。(関係ないコメントです)

 

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前述ごとく、ポートレート撮影の際の基本構図、どこで人物をカットすると座りのいい構図になるかを説明。

 

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まず、最初に私が説明しながら撮影しました。最近、スクワットに力を入れているので、この姿勢でも大丈夫です。スクワットをしながら撮影すると上下にブレます。してませんが。

 

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撮影データを確認します。プロのフォトグラファーの参加者もいらっしゃいました。プロの場合、何度もシャッターを押しているうちに良いのが撮れた的なアプローチでは通用せず、狙ったブレ感を最初に仮説を立てて実行するアプローチが必要です。上がりの精度アップが必要です。その為、どうカメラを動かすとどうブレるのか、芯(輪郭)を残したいのか残したく無いのか、どの方向にブラしたいのか、シャッタスピードがどの程度だとどうなるのか、同じシャッタースピードの中でもどのタイミングでどうすればどうなるのか等を試しながら説明しました。

 

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参加者の皆様にも一人ずつ撮影してもらいました。撮影会では無いので、同時に撮影しません。一人ずつです。私が髪の毛をブラしているところです。この写真の右端の下にあるブロアーは強すぎるし、乾燥するし、音も大きいのでモデルに負担になるし、クリエイティブな発想になり難いです。今回は Dyson のスタイラーを使用しました。この方が柔らかく毛がなびきます。これはパープルの直営店限定モデルであまり流通していません。結構、待って入手しました。(引っ張るなぁー)。私のお気に入りアイテムです。ブラインドのワンタッチで風の温度を切り替えれます。音も静かです。

 

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モデルの衣装、ヘアメイク、髪や肌の色、雰囲気、髪や衣装柄のブレ感、表情、全体的な雰囲気はパーフェクトに調和されています。

 

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自分の撮影順番で無い時間も無駄にならない様に、個別に質疑応答やコメントをしています。参加者個人の立場や目的や興味は異なります。その為に、前述しましたが、スタジオに入る前に一人ずつに自己紹介を兼ねてヒアリングしています。

 

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上の写真は人物を2ストップさせており、途中ブレは無しで、左の像は目を瞑って、右の像は目を開けてもらっています。

 

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この写真も同様です。上の写真に比べてさらに2つの像をずらしています。撮影していると、タイミングが掴めてきます。また、撮影者なのか、カメラなのか、被写体なのか、両方なのか、何をブラすと、何が変わるのかを狙って撮っていくのがプロの撮り方です。その秘訣を皆に伝えたつもりです。後は個々での練習や実践です。

 

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この写真は顔の中に顔を入れています。

 

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4つの顔を一つの写真に入れました。視線が各々異なります。構図を事前に考え、モデルに説明しながら表情をコントロールしながら撮影しました。

 

続いて2着目のコーデです。

 

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今度は、彩度の効いたビビットカラーの写真で、幻想的かつ色気のある写真を狙いました。赤のワンピースから和っぽいイメージがインスパイアされ他ので、赤の反対色である緑の帯、力強くコントラストの出る黒の伊達襟を使用して、帯締めを二重にしました。足元もシンプルな草履にしました。着物のヘビーを無くし、ワンピースの軽やかさに和のテイストを入れてみました。

 

ヘアスタイルは後ろで纏め、メイクは1着目よりも更にアイメイクの緑を濃くして帯とマッチさせ、リップはドレス同様の赤でリップの輪郭をはみだして乗せました。

 

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全体を暗くして、その部分をカラーリングしました。その為、メインライトはスポット性のあるライトにバーンドアをつけて範囲をコントロールしました。

 

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スポットライトにありがちなのは、コントラストが付きすぎて、顔が白くなり過ぎたり、足元が暗くなり過ぎたりで、疲れる写真になりがちです。よって、ディフューザーを付けて、光を柔らかくしました。

 

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続いて、漆喰壁に畳という和のエッセンスを足しました。これにより寝て横になった写真を撮影でき、構図の工夫ができます。

 

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少しアップの構図に。光の色と衣装の色、表情を一致させ、ブレ感を演出すると官能的な世界観になりました。

 

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よりアップにして「幻想的な世界観」という狙いの写真になりました。

 

テーマは「ブレ感」でしたが、ワークショップの内容や進め方はブレずに終わる事ができました。

 

最初は柔らかく淡い雰囲気でのブレ感、後半は濃厚で官能的なブレ感という2つの世界観をサンプルとしてレッスンを進めました。

 

今回は参加者の皆様もいい写真が撮れた事だと思います。一見、難しそうな写真ですが、カメラやストロボは理論通りに作動するので、光の理論を押さえておいて適切な対応をすると、全ての写真は技術的には誰でも撮れると思います。そこにはいくつかのポイントはハードルがあるので、なかなか実施できない場合もありますが、参加頂いた方は余分な時間をショートカットできたかと思います。あとは復習、そして自分の作品制作の為のアイデアだと思います。

 

今回のモデルは当ワークショップ史上、最年少となりました。過去の15歳の記録を塗り替え、14歳です。しかも14歳になりたてで、少し前まで13歳だったのですね。(←当たり前ですやん)。ロシア出身です。表現力は圧倒的でした。勘のいいモデルでした。

 

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オーディション時に当社スタジオに来て頂いた時の写真です。” Workout ” が気に入りました。(「そこかい!」)

 

終了後、参加者の皆様に感想を伺ったところ、「期待していた写真が撮れました」と嬉しいコメントを頂きました。参加者の皆様、お疲れ様でした。

 

model : NIKA ( aNmoda)

 

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次回のワークショップの告知。

2019年7月20日(土)15:00 – 17:30 開催予定。
テーマ:季節や天候をライティングで表現する

ポートレートスクール サイト:http://www.portrait-school.com/

撮影ワークショップのレポートページ:http://www.portrait-school.com/report.html
(上記内容を項目別に纏めたものと、過去のワークショップのレポートのアーカイブもあります。)

(参考)ポートレート撮影ワークショップの様子がわかる youtube 映像。

参加者のコメント及び状況動画:https://www.youtube.com/watch?v=D6KKzkkCvl0&t
1分でわかる撮影ワークショップ:https://www.youtube.com/watch?v=xjV2IewwfqE

 

 

 

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