ポートレート撮影ワークショップのレポート(2017_7月度)

 7月22日(土)にポートレート撮影ワークショップを行いました。その様子をレポートします。

各回毎に違ったテーマに添っての撮影ワークショップです。共通するテーマは「伝えたい世界観をライティングによって演出し、写真表現する」という事です。写真はあくまでもコミュニケーション手段のひとつ(ビジュアルコミュニケーション)であり、「写真によって何を伝えるのか」「何を表現するのか」が大前提であり、その為には表現技術が不可欠なので、技術は徹底的に習得すべきというアプローチです。

今回のテーマは “カラーリングポートレート” です。カラーに染める事が大事なのでは無く、何故、写真を色づけする必要があるのかを理解しておかなければ、枝葉末節な不要な技術になってしまいます。自分の表現したい世界観のターゲットイメージの画づくりをする為に、作品コンセプトにあったカラーリングができると表現の幅が広がります。

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今回も参加者の自己紹介を終えて、直ぐにスタジオに入りました。被写体であるモデルを前にして、撮影を通して学ぶ時間を可能な限り確保してワークショップを進めています。

最初に、モデルの雰囲気、衣装、スタイリングを見て、どんな画をターゲットとするかを話し合います。そこまでが「感性」です。そこからは「技術」であり、小学校の頃に学んだ理科の授業の内容通りの基本的な理論のみです。そこには感情が入る余地がありません。

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レンズ選びと絞り設定を決めた後は、メインライトとスタジオ内でのモデルとの位置関係(ポジショニング)を決めます。そこが入口で、この処方を誤ると作品はターゲットとした画にならず、違った方向に進んで行きます。経済界でいう「方針」や「戦略」「方向性」の様なものです。

今回は参加者の皆が意見を出し合って、メインライトを決めました。正しいか誤っているのかが大事では無く、仮説をたてて、それを実証し、検証していくプロセスを繰返していく事が習得する事の唯一のアプローチだと思います。

ターゲットイメージは淡く柔らかい色合いをほんのりと写真に乗せる事です。その場合もモデルの顔色は自然にキープして、背景のみにカラーリングする様なイメージです。

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最初は別のメインライトでの撮影を行って、何が違ったのかを参加者が認識する事ができました。次のステップはサブライトの選択です。衣装やモデルのヘアやメイクの色にあったオレンジ系のライトを使用しました。そして、メインライトとのバランスを少しずつ変化させ、その度にアウトプットされる写真を確認しながらその差を確認していきました。ここではそのプロセスでの状況写真や撮影写真の紹介は省略します。

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最初は私が撮影してみました。そして、メインとサブライトとのバランスが私が一番しっくりとした画です。
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先程、「小学校の理科の理論」と書きましたが、ターゲットイメージを設定した後にもう一度、「感性」を発揮する必要がある時点があります。モデルに撮影コンセプトであるテーマや状況設定を伝え、その表情を自発的に作ってもらうステップです。

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そして、参加者の皆が一人ずつ撮影しました。

参加者の一人が「(ライティングによるカラーリング撮影は)背景紙を使用しての撮影と全然風合いが違うという事が理解できました」とおっしゃられていたのが印象的です。色調を微妙に変化させたり、上の全身ポーズ写真の様に微妙に色合いが単色では無く、交じり合っているのはカラーバックペーパーでは表現できない「味」です。

次も基本的に同じコンセプトで柔らかい風合いです。モデルのパンツの緑色の柄とベージュのキャミソールにあったイメージを光で作りました。

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まずは、モデルの方にフロアに座ってもらい、パンツと顔の距離を縮小する事により、構図内にベージュと緑が入る様に設定しました。メインライトはProBoxという光の芯を作らないストロボアクセサリーを使いました。これが無ければディフューザーを何枚も重ね、且つ、光の指向性をもたせると同じ様な効果が得られます(仮説)。そして、サブライト(アクセントライト)として髪の毛の艶を出すためにヘアに向けて且つ光が背面壁に回らない様に指向性を付けて打ちました(ランタン使用)。最後に緑色の光をモデルの顔に回らない様にバーンドアを付けて背面壁に打ちました。(それが上記の写真です。)

しかし、更に、より完成度を上げる為にモデル着用の柄パンツに合わせて、スポットライトに模様プレート(GOBO)を取付け、ムラバックにしました。

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ムラ度合いをコントロールしながら、しっくりといく風合いを作って行きました。連写対応ストロボを使用しているので、チャージタイムをあまり待つ事無く、効率良く進める事ができました。

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最初に思い描いたターゲットイメージを作る事ができました。緑色とベージュの面積を光とモデルの服装で1枚の写真に表現しました。

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3つめのパタンは、ハードにガッツリと色を乗せたいケースです。

ターゲットイメージのキーワードは、「情熱」「アモール」「ハード&ハート」等で、前述の2作品とは逆のイメージです。

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そして、その展開として、モデルの背後が明るくして、ガッツリ感に少し雰囲気を加えました。
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これらはメインライトを1×6にグリッドによって更に指向性を付けたものです。そして、次はモデルの影を赤く染める事に挑戦しました。メインライトをスポット系に変えました。

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仮説通りの結果になりました。更に、モデルの影を赤と黒の2つ異なった色にして、よりアートな風合いを作ってみようと挑戦しました。

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ワークショップも終盤だったので、なぜ、影が黒と赤ができるのか等、参加者も論理的に理解できつつありました。

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最後は「カラーリングお疲れさま写真」を撮影しました。善し悪しは全く別として、世界にあまり類の無い写真だと思います。(笑)

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そして、熱心な参加者は新商品のアクセサリーを試してみたいとの事で、スタジオでアフターをされていました。

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今回の “カラーリングポートレート” は簡単そうなのですが、明るい写真からダークな写真、陰影の有無の写真、シャドーの有無の写真、環境光とのミックス光、多光ライティング等の全てが撮影できなければ、色を乗せる事ができません。そして何よりもヒストグラムを読めなければ出来ない内容でした。(ここは一番キーな箇所ですが、内容はヒミツとさせて頂きます。)

今回のワークショップでは大きく3つのカラーを作り、各々、数パタンの風合いをライティングで作って行きました。バックペーパーでは表現出来ない技術も習得できたと思います。また、違いを体験できたと思います。

単純に、今回のワークショップを受講すると、3本のバックペーパー、ペーパースタンド、ハイエースワゴンのレンタカー代、駐車場代、設営アシスタント代を合わせて15万円は浮いたかと思います。(笑)

ワークショップ終了後はギャラリーで「ヒミツの茶話会」を行いました。
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ワークショップ内では技術中心の内容ですが、その技術を発揮する為にもっとも大事である、創作上のテーマ、モチーフ(動機、主題、素材等)の見つける術やオリジナリティー、被写体の選択、アートディレクションの重要性等について、話し合いました。

撮影の課題は2種類あります。一つは光の理論やカメラオペレーション(技術上の問題)、もう一つは何を撮るのかの設定(感性や世界観の問題)。言い換えれば、撮影が苦手な人には2種類あり、撮影技術が不足しているパタンと何を撮ればいいのか分からないパタンです。

「感性」×「技術」=「表現力」とした場合、その両輪の課題を詰めて行く場づくりを目指しています。

また、次回、参加者の方々とお会いできる事、時間を共有できる事、化学反応を楽しみにしています。

時間のテーマを含めての予定は追って近日中にご連絡します。

Model:Nikolette(Schonberg Models)

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ポートレート撮影ワークショップのレポート(2017_7月度)” への2件のフィードバック

  1. 次回、ポートレート撮影ワークショップに機会があれば是非参加してみたいです!

    1. 飯田さま、返信が遅くなり申し訳ございません。コメントありがとうございます。次回のポートレート撮影ワークショップの日程とテーマが決まりました。10月21日(土)15:00-17:30 テーマ:”レトロ&アンティーク 〜時代感を表現する〜” 詳細/申込は http://www.portrait-school.com/workshop.html
      ご参考までに FBページは https://www.facebook.com/portraitschool.tokyo/  インスタグラムは https://www.instagram.com/portrait.school/?hl=ja
      いつも少人数ですが、活気のあるワークショップです。よろしくお願いします。

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