東京都写真館協会主催イベントでのセミナー実施

 8月29日、東京都写真館協会主催のセミナーで講師を行いました。キヤノン社の企画運営、プロフォト社の協力のもと、実施する事ができました。(場所:キヤノンマーケティングジャパン本社)

 タイトルは「ライティングレパートリーの拡充が新たなビジネスチャンスを作る」で、振袖撮影と男性シニアポートレートの2部構成でライティングデモを行いました。

 事前に会場にキヤノン製のPro1000で出力した私の作品を20数点展示しました。発色、スピードは過去のプリンタにない素晴らしさがあります。また、音も静かなので、クリエイティビティーの妨げにもなりません。特に従来のプリンタではモニターの色とプリントの色がなかなか合わず、1枚のプリントをするのに歩留まりが多く、調整とやり直しが必要でしたが、この Pro 1000はサンプル出力をしている最中に一度もロスはありませんでした。一回でプリントできるというコスト面や時間面のメリットは大です。モジュールとしては最高のマシンだと思います。あとは、レイアウト、トリミング、面付け等の業務に必要なソフト面が充実していくと、更に使い易い機材になる事でしょう。

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 まず、最初のセミナー形式では、自分自身の写真観(ライフテーマや作風)、ポートレート撮影のワークフロー、そして具体的なライティングの技術的ステップ等を体系的にパワーポイントにて説明しました。

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  一通り、前、後ろ、座りの全身と半身の6パタンをオーソドックスな全方位なライティングで着物のコンディションを素早く整えながら絵になる角度で撮影しました(全身と半身のポーズの違いや小物の使い方等含め)。その後、逆光で撮影しました。私は白い背景でも、求めるイメージによって、写真の表情を色々と変えて行く事にいつも挑戦しています。フォトグラファーたるもの白い背景を白く撮るだけでは芸は無く、背景紙に拘束や左右される事なく、自分で風合いを作って行く事にバリューを感じています。

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 写真を撮影する際に心掛けているのは、毎回のカット(場面展開)にテーマを決めて撮影する事です。下の写真では “大正ロマン風” に少し古い雰囲気で撮影して、昔の写真の雰囲気に仕上げて行きました。今回、この写真を撮影するのに実は大変、苦戦しました。リハーサルの段階から上手くタングステンミックス光で写真を染める事が出来ませんでした。85mm f1.2のレンズを開放にして、プロフォト製のProboxをメインライトにしましたが、背景が真っ白のままで落ちませんでした。「いつもと何かが違う。」そして、そのまま本番に入って行きました。やはりアウェイ環境なので、いつものホームとは違います。会場の外光がブラインドを降ろしても入って来るので、f1.2の露出設定では、どうしてもストロボを炊く前から明るく光のコントロールに苦戦しました。そして、今回は新たな試みとして、タングステンライトの無い特設会場でも、Profoto製の新製品であるモデリングランプが強いB1Xというストロボを定常光(タングステンライト)として活用してみました。あれこれと内心焦りながらも表面的には笑顔で話しながらデモを続け、結果として自分の頭の中にあった当初からのターゲットイメージ通りのアウトプットが出来ました。

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 また、背景に着物の色である赤系と緑系のライトを薄く入れてみました。光で背景を作って行くのはかなりハードルが高いですが、この技術を習得すると所有する背景紙の種類にコントロールされ無くなります。被写体の雰囲気や着物の色により、背景を光で作る事が出来ます。

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 限られた時間ですが、多くのカット数のバリエーションある画を撮影する事ができました。

 続いて、男性のシニアポートレート撮影のデモを行いました。

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 男性のポートレートは女性の場合と異なり、皺や陰影も生き様(ライフストーリー)として表現していきます。

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 そして、振袖や女性を撮影する場合と異なり、表現したいテーマにそって、スポット系のライトを足していき、多灯ライトで風合いをコントロールしていきます。

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 被写体と背景の2カ所で露出設定を行い、各々の光によるレイヤーを重ねていき、デザインを作って行きます。上の写真はメインライトをフレネルスポットで、サブライトは背後から頭に向けてスヌート1灯、さらに背景にスモールスポットでオリジナルのゴのGOBO (遮光板)を使用して模様を付けてみました。これはHSS(=Hight Speed Sync.)機能を使用する事により f1.4で至近距離からの強いスポットライトにも拘らず、露出を維持する事が可能となりました。これも機材の進化によって画づくりが可能となった例です。過去はスタジオ内ではカメラ側ではシャッタースピードを露出設定の武器に使用する事は出来ませんでしたが(絞りとISOのみの調整)、HSS対応ストロボ(Profoto B1)の出現により、スタジオ内でもロケスナップの様にシャッタースピードも自由に動かす事ができる様になりました。

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 今回のデモではTips的なイリュージョンの様なライティングよりも王道なライティングを行いました。大事な事は被写体が誰であっても同じライティングをするのでは無く、個性を見て、ターゲットイメージを設定して、画づくりを組み立てて行くプロセスです。それによって画一的な写真では無く、個性を重視した作品になるという考え方からです。そして、派手な演出はお客様には直ぐに飽きられ、撮影側も応用が効きません。「シンプルな写真こそ素材が生きる」(”I love Simple Photography.”)という考え方と私の作風からです。

 各々の写真館はコンセプトもターゲットのマーケットが異なりますが、自分の作風、ライフテーマと軸を持ってオリジナリティのある写真撮影を展開して他の写真館と差別化していく事の重要性が少しでも伝わっている事を願います。

 受講して下さった皆様は内容全体に関しては賛否両論があるかと思いますが、部分的であっても、良くも悪くも何かを考える機会になって頂ければと思います。毎回そうですが、こういうセミナーという自主的な学びの場に時間とエネルギーを費やして出席される向上心に敬意を感じます。今回も熱心な視線を感じ、私も真剣に説明させて頂きました。

 関係者の皆様、準備段階から当日の実施に至まで、色々とお世話になり、本当にありがとうございました。

モデル:Rumi Suyama(振袖)、Haruo Hiramatsu(男性シニアポートレート)

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(Information)
ポートレート撮影のワークショップを開催しています。次回は10月21日(土)、テーマは “レトロ&アンティーク 〜時代感を表現する〜” 。詳細はサイトにて。

  

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