ポートレート撮影ワークショップ 実施レポート(Jul. 2018)

7月21日(土)にポートレートスクール主催のポートレート撮影ワークショップを実施したので、レポートします。

今回のテーマは ”影で演出するモノクロポートレート” 。一般的に撮影をする際には陰影が無く、柔らかい光で包まれた写真が好まれます。また、ニーズから逆算するとカメラマンも被写体の影を如何に消すかを考えてライティングを組む傾向にあります。特に、被写体が女性の場合にその傾向があります。今回はあえて、影も被写体と捉え、影を含めて写真全体をデザインするポートレート撮影がテーマです。

まず、最初に受講生の満足度を高める為、アドバイス内容を個別に適切に行える様に、ワークショップ参加にあたり受講生達の興味や参加目的を伝えてもらいました。

スタジオに入り、モノクロポートレートなのに、カラーチャートを撮影してもらい、そのヒストグラムを確認してもらいました。(カラーチャートを撮影した場合にどの様なヒストグラムになるかご存知ですか?興味のある方は試してみてください。)

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そして、ヒストグラムを確認し、影を演出してのモノクロ映えする写真はどんなヒストグラムにすべきか、スタイリング(衣装、小物、メイク etc.)はどうすべきか、モデル選びのポイントは等を逆算して確認していきました。

ポートレート撮影をする際にフォトグラファーが技術的(←コンセプトワークが終わりターゲットイメージが出来た後)に最初に行うステップは、レンズ選びと絞りの設定です。今回は影も被写体の一部と捉える為、前後する影もきっちりち表現する為に、F10以上で、且つ、全身、半身、縦位置、横位置がモデルの動きに追従して素早く対応できる機動力のあるレンズが向いています。

その次はメインライトを選び設定する事です。アンブレラやソフトボックスでコントラストのある強い影は描けるでしょうか。では、ビューティーデッシュだとどうでしょうか。光を包む形状になっているので、たとえ金属のアクセサリーであってもアンブレラよりも影は出ません。その次に、最も一般的に候補とされる光量を集約でき、夏の太陽を表現できると言われるマグナムはどうでしょうか。影のエッジが表現できるでしょうか。(試してみてください。)。という様に色んなライトシェーピングツール(=ストロボアクセサリー、モディファイヤー)を実験してその場で確認して行きました。

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次にポジショニングです。白ホリのスタジオのどの位置にモデルに立ってもらい、どの位置からストロボを当てると、どの様な絵面の変化があるのでしょうか。綺麗な影を表現するには、影の大きさ、影の場所や方向は光源をどう変化させ、モデルの立ち位置をどうコントロールすべきか。これは小学校の理科の時間の日時計の原理の授業を思い出して頂くと回答が出ます。

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そして、演出として、参加者に送風機をモデルに当ててもらいました。構図上、モデルが手を横に広げると影も横に広がり、素早くカメラを横位置にするといいかと思います。
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最初はウォーミングアップにモデルの影と一緒に写すというシンプルな影の使い方でした。次に壁にモデルの影を付けつつ、背景にモデルの影ごとをスポットライトで包み、更に床に反射させるという画作りに挑戦しました。

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この場合、通常のスタンドを使用しては光源の高さに制限が出るので、ブームスタンドを使用して、光源をコントロールしながらサイズと位置決めを行ってみました。

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次に、モデルの顔に衣装柄の影を入れて演出してみました。ゼミ形式の参加型のワークショップらしく、皆が試行錯誤しながら光を作り、画作りする事ができました。このワークショップの醍醐味です。「考えて試してみよう」的な。音声竿まで登場しました。

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そのアウトプットがこれです。
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続いて、2スタイル目でモデルの方に衣装チェンジしてもらいました。1つ目のものが夜に咲く花の様な妖艶なイメージであったのに比べ、2つ目のスタイリングは幾何学的なカラッと乾燥したクール&モードなイメージです。

最初にウォーミングアップで、1着目の復習を兼ねてモデルの影を壁に投射して画を作りました。全身と上半身をモデルのポーズに追従して。
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撮影するとパソコンに飛んだ画像を確認しながらフィードバックして行きました。そして、RAW現像のパラメータについても説明を加えました。
気が付かれたかと思いますが、今回のBTS写真は暗くて素粒子感ガンガンです。モデリングライトで影を確認し、アウトプットを予測してデザインしながら撮影している為、スタジオの環境光はオフにしています。

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さて、ここからはアイデアの要素を入れての撮影です。被写体の顔半分を陰(シェード)によって暗くしました。これだけだと、どこにでもある陰影のある写真です。それを更に、衣装・小物やイメージを活かして、ハイライトの背景を影(シャドウ)で落とし、陰部分の背景をハイライトにして、格子柄のデザインの写真に挑戦しました。

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カポックの影を活用しました。ライティングで格子柄デザインを作った出来上がりの写真です。

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次はフォトシューティングそのものをデザインしてみました。シンボルとなるカメラと三脚の影を背景に写し出して構図の中に入れてみました。
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画の中に「伝えたい事」を表現する為の情報を入れた例です。
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そして、最後は恒例の「お疲れ様写真」です。最後までテーマを貫いてみました。

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光源の方向に白い衣装の人達で、逆が影のシンボルとしての黒い衣装の人が配置されているという出来過ぎの写真となりました。

最後にギャラリースペースで、サマリーと質疑応答を行いました。
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今回のテーマが従来のものと異なるポイントは、従来のワークショップのテーマでは人物自体が被写体であったのに比べ、今回は影を含めて被写体として捉える事、そしてモデル単体での構図では無く、影を含めての構図を考える事です。そして、より「伝えたい事」のストーリーが重視される事です。

参加者の皆様が今回のワークショップで教材として行ったサンプル撮影をヒントとして、影を演出したモノクロポートレート写真を各々が自分のアイデアやデザイン力、そしてそれを再生する技術力を使ってオリジナルの作品を作り、表現の幅を拡充される事を切に祈ります。自分でオリジナル作品を作る場合は、最初に、アイデア時点で悩み、そして準備段階、そして撮影現場内で悩んで、試行錯誤しながら自分の味が表現できると思います。ライティングやポジショニング、構図で良くも悪くも新しい発見があるかと思います。それらを乗り切り、自分の考えや伝えたい事が表現されているオリジナル作品を作って行く事は楽しいと思います。

今回のワークショップで私が参加者に伝えたかった事は、単にライティング技術では無く、アイデアを持って、デザインを考えて、スタイリングを含めてのアートディレクションを行なって撮影に臨む重要性です。アイデアやデザイン力はストロボやカメラの有無に関係ありません。日頃からの問題意識や生活の中でトレーニングできます。

model : Stacia Eger (Hi & Mi Management)

参考:Portrait Schoolサイト内の今回のワークショップレポート:http://portrait-school.com/corner72/picturesque.html
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次回の撮影ワークショップは10月20日(土)15:00-17:30 の予定です。テーマ及び詳細は8月1日に発表いたします。皆様の参加をお待ちしております。

portrait school のHP:http://www.portrait-school.com

過去のワークショップレポートのアーカイブ(画づくりのポイントを7つの項目毎に纏めたもの):

http://portrait-school.com/report.html

Portrait School の facebook page:https://www.facebook.com/portraitschool.tokyo/

Portrait School の Instagram:https://www.instagram.com/portrait.school/

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