ポートレート撮影ワークショップ実施レポート ( Jan. 26, 2019)

3ヶ月に1回のペースで開催しているポートレート撮影ワークショップのレポートをします。

今回は1年で一番寒い時期の開催でしたが、テーマが ” 背景とテクスチャーの研究 ” であり、季節感が出ないスタイリングで行いました。

ポートレート撮影をする際には、とかく人物にどう光を当てるか、人物をどう表現するのかを考えます。それが一般的な考え方かも知れません。

一方、プロであるフォトスタジオ系ビジネスでは背景紙や布、カンバス等を数種類所持し、電動又は手動で撮影時に選択するというのが大半です。フリーランサーのフォトグラファーもクライアントの意向や作風によって背景紙を現場に運んでの撮影が一般的です。ただ、この場合、作風が所有する背景紙に依存されてしまいます。(もしくはハウススタジオ的でより奥行感はあるものの、被写体が誰であっても一定の撮影設備内)

具体的には、被写体の衣装の色柄や被写体自体の個性がどうであれ、写真館やカメラマンの論理(事情)で一定の所有背景紙にイメージが引っ張られた写真になる事も多々あります。又、別のパタンでは、バリエーションのある写真が撮れますと唱いながら、全く同じのライティング、同じポーズや表情で、背景の紙の色のみが変わっているだけという事も起こり得ます。

プロであれ、アマであれ、趣味であれフォトグラファーは「背景」に気を配りましょう。作品テーマやイメージ、そして被写体のスタイリング(ヘアメイクや衣装)、個性によって「背景」をオリジナルに作って行ける発想と技術は不可欠です。ライティング、その他の工夫をして、背景をコントロールできる表現力は最低限、持ち合わせておきたいものです。

最初に参加者がギャラリーに集まり、各々の受講目的の確認をしました。受講生の中でも各々のスタンスが異なるので、それぞれが興味のあるアドバイスやコメントをしたいからです。少人数制ワークショップのいいところです。個人個人と向き合えます。

そして、当日に行う内容の主旨と考え方を説明しました。この件は後ほど説明します。

スタジオに入り、早速にモデル撮影を行いました。全ての撮影は白ホリゾント(白いRのついたシンプルな壁)で行いました。

最初の方は説明しながらライティングで背景をコントロールするという事、背景紙を使用せずに、フォトグラファーとして最低限、普通に変化させれる基本の内容です。

 

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背景紙を使用せずに、白い壁をグレーにします。そして、トーンを衣装に近づけると、しっくりとし、お洒落になります。被写体であるモデルの立ち位置(壁からの距離とメイン光との距離のバランス)とメイン光の強さのコントロール。

 

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そこに、一部分、顔の付近の背景が明るくなる様に設定しました。

 

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このBTS写真の左端にあるスポットを壁打ちしました。ストロボにグリッドとスヌートを取り付け、光の指向性を付けながらもエッジが出ない程度にコントロールしています。被写体へのメイン光と背景へのサブ光とのバランスの調整です。

 

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次に、背景をグラデーションにしてみました。

 

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次は、被写体の影を背景に入れたり、外したりで、写真全体に占める黒い部分のデザインを考えての撮影です。上記にサンプルは影を半分程度、部分的に背景に入れました。

ここまでは基本中の基本ですが、参加者のレビューも兼ねてザッと説明しながらデモをしました。というのも、それ以降の内容を断片的なハウツーと捉えるよりも、体系的にして位置付けを理解して欲しかったからです。

 

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次は斑背景を作ってみました。部分的に明るい箇所と暗い箇所があります。

 

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この斑は隙間のあるゴムボールにストロボを当てたものです。

 

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次は、同様に扇風機で柄を作りました。

 

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そして、更に同様に団扇で背景の柄をデザインしました。

 

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今度は上記の他の写真と異なるのは、背景へのストロボをモデリングランプのみにして、環境光ミックスで背景のデザインをしました。タングステンをミックスしているので、グレーを焦茶色にしています。

 

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上記の全ての写真は、モデルへのメイン光と背景へのサブ光とのバランスで、画づくりのデザインを作ってきたものです。

 

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これは、レンズ〜モデルの間にオブジェを入れ、前ボケを作りました。この写真のオブジェは木製の脚立です。

 

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ボケ味のコントロールはオブジェの置く位置や撮影位置、レンズのF値等でコントロールします。また、オブジェに光を入れるか入れないかで、写真のデザインは変わります。今回は影とオブジェの前ボケをシームレスにしたかったので、オブジェには光を当てませんでした。また、全体のデザインには整合性があると、より写真としてのデザイン力が増し、お洒落になるので、背景への模様と前ボケ模様を同類に属すものにすべきです。今回は幾何学系にしました。

 

 

次にモデルには衣装チェンジをしてもらい、更に別の演出を続けました。

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手作りの特殊レフ板を使用して、モデルへのメインライトはレフへの反射光のみです。レフ板に集光させる為に、マグナムにグリッドを付けてみました。

 

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参加者がレフ板を持って、背景及び被写体へ斑のある不思議な光を当ててもらいました。

 

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衣装として作った布を巻いただけのスカートをモデルに靡かせてもらいました。スカートのテクスチャーを背景にしました。

 

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更に、光に薄くくすんだピンクの色合いを付けてみました。色は布の色との整合性によって選びました。この場合も、メイン光はマグナム+グリッドを特殊レフによって反射させ、光の斑を出したものです。

 

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皆でレフを持って、順番に撮影しました。

 

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更に、柄斑だけでは無く、色斑も付けました。レンズ前にピンクのカラージェルを部分的に入れました。こちらもメイン光の燻んだピンクとの整合性と統一感を図りました。

 

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参加者の皆で協力して、ライティングを体験しながら撮影しました。

 

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そして、最後は更に複合的に、光の斑、色、物理的に花を使用しての前ボケ、後ボケ等で色合い、構図、モデルのポージングや表情等で写真デザインをして、撮影しました。

 

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モデルへのメイン光は上記同様にカラージェル+マグナム+グリッドでの特殊レフの反射光により背景と被写体への斑、前ボケの花には 1×6’+グリッド+ストリップマスク、背景への観葉植物へはグリッド+スヌーとのスポットライト等各々に担当ストロボを付け、ポージングによっての構図を決め、表情や衣装を含めて全体のトーンの整合性を統一しました。

お洒落な写真デザインを作るには、背景、被写体、レンズ前の3層レイヤーの整合性、そしてシームレスにする事です。光、衣装、メイク、小物等のオブジェ、空気感、全てにおいてシームレスにし、何がその色合いや柄を作っているのかを分かりにくい様、違和感が無い様にすると統一感のあるしっくりとしたお洒落なデザインになる傾向にあります。色んなオブジェを工夫して実験して研究、実証していく事ができました。テーマ通り ” 背景とテクスチャーの研究 ” でした。

今回のテーマや内容は過去のレッスンと比べ、主旨や方向性の理解が無く参加すると、単なるハウツーで終わってしまうので、レッスン前に重要な事をしっかりと詰めておきました。大事な事は、小手先の演出では無く、自分のライフテーマや感性と演出技術をマッチングしていく事です。作品を通して伝えたい事やメッセージが無く、ただ面白い演出を写真表現と混同しない事が重要です。

ワークショップという限られた時間で出来る事、すべき事は、表現の幅を広げる為の気付きの場を提供する事だと考えています。作品の原点であるその人の生き様やライフテーマ、感性に介入はすべきでは無いです。各々の感性と技術をマッチング出来る手伝いが出来れば幸いです。

 

 

最後に、参加者でお疲れ様写真を撮影しました。

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皆様、お疲れ様でした。ワークショップ内で行った内容は一見、盛り沢山でしたが、全て基本の組合せです。よく「写真は深い」という人がいますが、写真を撮る事、撮影技術は他の自然科学の研究に比較して極めて浅い事です。シャッターを押せば像は写ります。深いのは人のメッセージであり、感性をカタチにしていく創造力です。習得内容を活用、応用して自分の作風の中に活かせて頂ければ楽しみは広がると思います。

 

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ワークショップが終わり、シュークリームを前に何か話している私。

 

model : Camilla (aNmoda 所属)

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次回のワークショップの告知。

2019年4月20日(土)15:00 – 17:30 開催予定。テーマ:”ブレ感のある幻想的なポートレート”
内容詳細は別途追ってご連絡します。

ポートレートスクール サイト:http://www.portrait-school.com/

撮影ワークショップのレポートページ:http://www.portrait-school.com/report.html
(上記内容を項目別に纏めたものと、過去のワークショップのレポートのアーカイブもあります。)

 

(参考)ポートレート撮影ワークショップの様子がわかる youtube 映像。

参加者のコメント及び状況動画:https://www.youtube.com/watch?v=D6KKzkkCvl0&t
1分でわかる撮影ワークショップ:https://www.youtube.com/watch?v=xjV2IewwfqE

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