ポートレートライティングワークショップ実施レポート(2020.01.25)

2020年第一回目のポートレートライティング・ワークショップを1月25日に開催したので、レポートいたします。

 

このワークショップは、ポートレートの分野において、スタジオにてストロボを使用してライティング技術を習得し、写真表現の幅を広げる事、イメージする世界観をライティングで具現化していく術を身につける事を狙いとしています。あくまでもストロボでのライティングによって演出する内容であり、日光や部屋の環境光で女性を可愛く撮る内容ではありません。また、ストロボを使用して、肌を美しく、皺が目立たない様に現実+アルファに撮影する内容でもありません。毎回、設定テーマを紐解き、考察し、モデル撮影を通してライティング演出の実習を行う内容です。求めるイメージや世界観がどうであれ、自分のレパートリーのポーズや表情を繰り返す、水着やミニスカートのモデルを撮影する内容でもありません。

 

3ヶ月に1回のペースで行っており、今回で14回目です。

 

今回のテーマは “おとなのガーリーフォト” です。ガーリーから連想するイメージは「可愛い」「女性らしい」「リボンやフリルのついた服装」・・・でおとなガーリーとなると「フェミニン」に近いイメージになります。そして、ピンクやティファニーカラーのパステル系の風合いを連想します。淡いピンクで染めた柔らかい写真を色白で清楚な雰囲気のモデルを選んでワークショップで撮ろうかと思いましたが、ありがちなので、敢えて違う方向で内容を組み立てました。

 

ピンクよりもオレンジや紫が似合うモデル、清楚さよりもボーイッシュでコケテッシュな雰囲気のあるモデルを選び、2つの対極的な画作りを目指しました。落ち着いた雰囲気とビビッドな雰囲気、ヨーロッパ的とアメリカ的、お姉さん的と妹的、とでも大きくカテゴライズしてみました。衣装、ライティング、レンズも全ての方向性も異なります。

 

スタジオに入る前にワークショップで効率よく習得して頂ける様に、ワークショップで学べる事や受講のポイントを話しました。そして、参加者へ各々に合ったアドバイスができる様に、逆に参加者から学びたい事や現在の写真と関わりを伺いました。

 

スタジオでモデルを迎え、まずは1つ目のパタン。

まずは何の演出もせずに柔らかめのレンズとF値設定+アンブレラ正面1灯で撮影しました。

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ここからストロボでのライティングの演出を行っていきます。まず、ターゲットイメージ(求める画、最終的な仕上がりのイメージ)を説明していきます。そして、ライティングのプロセスを説明しながら、設営していきます。

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落ち着いた雰囲気、背景を衣装に近い色に染め、衣装のドレープに光を入り込ませ心地いい陰影を付け、さらに衣装の風合いに合ったムラを微妙に背景に付けて、全体を陰影と柔らかさで包み込む雰囲気の画をターゲットとしました。

家具やバックペーパー/布を使ったり、花や植物で演出する事は作品としての個性を演出するにはいいですが、ライティングの技術習得の為には、物に依存する事なく、白ホリを光で演出していく方が断然、力が付きます。

上記のターゲットイメージを創っていくには、衣装の色とヒストグラム上に同等の明度のグレーを作っていきます。メインライトを最初に決めて、モデルと背景壁とストロボとのポジショニングを決めます。通常、私はこの場合なら大きめのオクタのソフトボックスにグリッドを付け、光の拡散を背景壁に届きにくい様に設定します。しかし、その環境を所有していない場合は、ワークショップ後に復習して自分のものに出来ないので、ショートカットや効率性を考えずに、機材依存が無く、理論で分かっていればできる方法で行いました。メインライトはアンブレラで斜めから打ち、背後に光が回りにくい様に板でカットしました。そして、そのままだと、逆の頬が暗くなるので、レフで多少おこしました。これもストロボを多数持っていれば、逆からグリッドを付けたソフトボックスで打てばいいです。その方が左右の光のバランスの自由度が増します。今回は工夫してストロボ所有が少なくてもできる方法で行いました。

 

仮説として、「グレー」+「ピンク」=「燻んだピンク」です。

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そして、この白ホリを露出減によって落としたグレーに向けて、ピンクのカラージェルを付けたストロボを打ちました。この場合のポイントは壁に跳ね返って顔や髪の輪郭にピンクのラインが付かない様にする事です。その為、バーンドアを付け、さらに羽根に画用紙を付けて光を切りました。

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そして、シャッターを切ると・・・

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これでかなり衣装の色と背景の色が近付いて来ました。これでいいかと参加者に聞いたところ、リピーターの方からはNGが出ました。さすが目が肥えてらっしゃいます。「もっと濃い色では無いでしょうか」と。ピンクのカラージェルのストロボは最小出力であり、アンブレラのストロボ出力はF1.8の絞りではISO50まで落としても白飛び寸前で頬がヒストグラムの右端ギリギリまでなので、これ以上、両方のストロボのコントラストは出せません。その場合、どうするのかを参加者に聞いてみました。皆、方向性を理解して頂けたのか、幾つもの意見が飛び交いました。各々のソリューションにはメリット、デメリットがあります。そして、ある方法で背後の色を落とす事が出来ました。HSS(ハイスピードシンクロ)という方法もありますが、それもストロボやトランスミッターという機材所有の有無になるので、今回は使いませんでした。

その場合も、まずは後ろのピンクジェルのストロボを消して、グレーの濃度チェックをしました。

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そして、ピンクジェルのストロボを再度、付けました。

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どうでしょう。衣装と背景(白ホリ)の色がしっくりと落ち着きました。これでほぼほぼ出来上がりです。通常はこれで仕上がりです。

更に完成度を上げる為に、壁にムラを付ける事にトライしました。small spot に付けたい斑の GOBO(舞台スポットライト等のカタチの切り抜き板)を付け、モデルの頭の背後に1灯壁打ちしました。

撮影画像を無線LANでパソコンに飛ばしているので、その場で迅速なフィードバックが出来ます。ストロボ光の場合、肉眼で見える象と撮影した画像は異なります。環境光よりも想像しずらく、より、論理力が求められます。また、参加者も私が撮影している内容を確認できます。失敗も成功もライブで。

ライティングがほぼ出来たので、モデルにストーリーを伝えました。

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上記の2枚が完成形の写真です。ターゲットイメージ通りの写真が出来ました。

 

通常、ムラの質感はカラーペーパーは無く、モスリンでは皺のコントロールが難しく布感が出てしまいます。カンバス背景ならオーダーで職人に描いてもらうと20万円はします。既製品でも10万円〜15万円が相場でしょう。しかし、それだと作品毎にタイムリーに製作する事は不可能です。また、スタジオ所有すると、被写体に合わせるのではなく、スタジオ側の論理になり、被写体の個性を無視する事になります。自分でライティングができると、慣れれば、この程度なら2分以内で作れます。2分で20万円なら、ストロボに投資する方が賢明でしょう。

 

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ターゲットイメージにより近づける為、RAW現像のパラメーター設定ポイントもその場で興味のある方へは個別に説明しました。

 

モデルの着替え時間を利用して、撮影上達ポイントを説明しました。感性を使う時点、感性不要で技術のみの時点、そのミックス方法。感性と技術からの2つのアプローチとは何か。感性から必要な技術にアクセスする力が私がいつも言うアクセス力です。この辺の話は現場ではより論理的且つ臨場感があり、ここでは割愛します。

 

そうこうしている間にモデルが衣装チェンジしてスタジオに来ました。

 

こちらも最初は何の演出もせずに撮ってみました。出来上がりと比較する為です。2作目はある程度、絞って撮影する画作りです。

今度はビューティーディッシュ1灯正面で、ファストファッションのポスター風です。1作目とストロボアクセサリが異なりますが、アンブレラとビューティーディッシュとはどこが異なるのか、その特徴は何か等を参加者でコメントを出し合いました。

この時点では、作品では無いので、モデルには何らストーリーも伝えず、立ってもらっているだけです。

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参加者にも一人ずつ撮影してもらっています。

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さて、2作目の撮影のターゲットイメージについて説明しました。目標が無く、出たとこ勝負で臨機応変にライティングを組んでいくと、再度、同じ画が撮れず安定性がありません。美容師に例えると、「ロングの髪を少しづつ左右切っていくと、最後にショートになった」では失格です。また、ライティングが仕上がって、それを最初から求めていた画だったでは、後出しジャンケンです。最初に参加者にどんな画にするのかを伝えました。カラフルでビビッドで、雑誌で言うと○○系、1作目と異なり光を背景だけで無くモデルへも当てます。しかも複数のスポット系ストロボの各々に役割分担させ、照射箇所を決めています。最初に写真全体のデザインを決めておきます。

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モデルはキョトンとした目で私を見ていますね。

蛇足ですが、撮影していて、このモデル誰かに似ているなとずっと考えていました。撮影データを見て気付きました。広瀬すずさんと、雪丸花子(芳根京子)さんに1%ぐらい似ているなと。オーディション時はBENI(安良城 紅)入っているなと思っていました。

そして、蛇足2として、更にどうでもいい事ですが、私のセーターはミッソーニもどきですね。

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ライティングは各々のストロボにオレンジ、グリーン、パープルのカラージェルを付け、スヌートやバーンドア、ハニカム等で光の指向性を付けてモデルへ当て、背景へはイエローのジェルをストロボに付けて照射させ、白ホリを染めました。

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三つ編みの髪の影に色が付いているのは面白いです。光で色を付けている限り、影の箇所へ光が反応します。

座っても撮ってみました。モデルに座ってもらった理由は、立ちに比べより被写体が立体的になるからです。

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通常の撮影ではメインライトがあり、サブライト(演出や補助用)という構成です。今回の作品では、モデルに並列で複数のライトを当てています。敢えて言うと顔へのオレンジジェルのストロボがメインライトです。

よって、参加者の方に顔へのオレンジ色のストロボを動きに追従してもらいました。スポットライト系のストロボの場合、光の照射位置がモデルの動きによってずれる為、アシスタントがいる場合は追従してもらう事にしています。

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更に完成度を上げる為、small spot +水玉GOBOで赤の水玉模様を部分的につけました。

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これ系の写真の面白いところは、モデルの動きによって色の面積が変わり、全体の色合いにバリエーションが出る事です。

 

総括をギャラリーに移動して行いました。

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私は大御所の写真家先生では無いので、「写真は感性だ」的な事を言いません。具体的に整理してみる事にしています。ストロボライティング上達アプローチ方法、ライティングの種類、等を体系的、論理的にお話ししました。そして、夜は更けていきました。

(終了)

 

model : ANASTASIIA(aNmoda)

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次回のポートレート撮影ワークショップは、2020年4月18日(土)です。詳細は後日、発表します。

ポートレートスクール URL : http://www.portrait-school.com/

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